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駐車場賃貸業界の皆様へ・・・【第3回】放置自動車問題と法的対応 ― 裁判から強制執行まで

2026.06.19

月極・時間貸しにかかわらず、駐車場経営で最も厄介なのが「放置自動車」です。料金を支払わずに長期間置かれると、その区画は収益を生まないばかりか、利用者からのクレームや風評被害につながります。
「勝手に処分すればよいのでは?」と考える方も少なくありませんが、法的機関を通さない処置は「自力救済」として禁止されています。所有権はあくまで利用者(または所有者)にあり、無断で撤去すれば不法行為として損害賠償責任を負うリスクがあります。ここでは、放置自動車への正しい対応を、手順ごとに整理します。

1. 放置自動車のリスク

  • 収益減少:区画が埋まり、他の利用者が使えなくなる
  • 風評被害:「管理が甘い駐車場」と評価され、利用率低下に直結
  • 安全上の問題:劣化による油漏れ・火災、犯罪利用の可能性
  • 法的リスク:無断撤去による損害賠償請求

 実際、駐車場経営者が独自にレッカー移動した結果、車両所有者から「不法行為」として訴えられ、数十万円以上の損害賠償を命じられた例もあります。

2. 所有者の特定 ― 最初のステップ

方法

  • ナンバー照会:運輸支局で所有者情報を照会(弁護士を通じて可能)
  • 警察への相談:盗難車か否かを確認。ただし「民事不介入」で対応してくれないことが多い

実務上の注意

  • 経営者自身が直接照会することは難しく、弁護士に依頼するのがスムーズです
  • 所有者が判明しても「連絡が取れない」「応答がない」ことも多い

3. 裁判手続 ― 明渡請求訴訟

 所有者が撤去に応じない場合は、裁判を通じて「明渡し請求」を行います。

流れ

  1. 訴訟提起:裁判所に提訴
  2. 判決:明渡しを命じる判決を取得
  3. 強制執行:判決に基づき、執行官が車両を撤去

所要期間

 通常は数か月〜半年程度。放置車両による収益減を考えると長く感じますが、合法的に解決する唯一の道です。

参考裁判例
 放置自動車の所有名義が所有権留保によってディーラー等となっている場合、名義人(留保所有権者)は直ちに放置自動車の撤去義務や不法行為責任を負わず、当該自動車に関するローン等について期限の利益が失われ、その残債務全額の弁済期を経過した後に撤去義務や不法行為責任を負うと判断した判例があります(最判平成21年3月10日民集63巻3号385号)。ローンやリースにより購入されている自動車かどうか、調査した上で対応する必要があるといえるでしょう。

4. 強制執行 ― 最終手段

 判決を得ても所有者が応じない場合、裁判所を通じて強制執行に移行します。

  • 執行官が現地に赴き、レッカー業者と連携して車両を撤去
  • 撤去費用は原則として所有者負担(ただし立替が必要な場合も多い)
  • 車両が残置物として保管され、最終的には競売・廃棄処分となる

実務上のポイント

  • レッカー業者の手配は事前に行う
  • 執行官と打合せをして費用見積もりを把握しておく
  • 撤去後の保管場所確保も重要

5. よくある誤解と注意点

  1. 「警察に通報すれば撤去してくれるのでは?」
    → 私有地の駐車場は民事問題のため、警察は介入できません。
  2. 「不法占拠だから勝手に撤去してよい」
    → 不法占拠であっても所有権は残るため、無断撤去は不法行為となります。
  3. 「利用規約に"放置車両は処分できる"と書いておけば大丈夫」
    → 裁判所は「処分条項の有効性」に厳格であり、所有権の制限を一方的に定めても無効となる可能性が高いです。

6. 弁護士に相談するメリット

  • 所有者照会の迅速化
  • 訴訟戦略(簡易裁判所か地方裁判所か、訴額の設定)
  • 強制執行手続の代行
  • 費用対効果の見積もり提示

実務的には「1台の放置車両を巡って何年も紛争になる」ケースもあるため、早期の専門家関与が経営の安定につながります。

まとめ ― 放置車両対応は「粘り強く、合法的に」

放置自動車は、駐車場経営にとって避けて通れない問題です。

  • 勝手に撤去しない
  • 所有者を調査する
  • 裁判を通じて明渡判決を得る
  • 最終的には強制執行で撤去する

この正しい手順を踏むことで、経営者側が違法性を問われるリスクを回避しつつ、安全にトラブルを解決できます。

「時間はかかるが、合法的に」――これが放置車両問題への唯一の解決策です。

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