


2026.06.19
人材サービス業界においては、「労働者派遣」「紹介予定派遣」「業務委託」「請負」など、複数の契約形態が使われています。
しかし、それぞれの法的性質は大きく異なり、運用を誤れば「偽装請負」として是正指導を受けたり、労働基準法違反に問われたりすることもあります。
特に業務委託・請負契約を締結しているにもかかわらず、実態としては「発注者が現場で指揮命令している」ような場合、行政から「労働契約とみなす」判断がなされ、労災・社会保険・割増賃金等の負担が一気に顕在化するリスクもあります。
また、派遣契約の場合、派遣元会社と派遣先会社との契約関係、派遣元会社と派遣従業員との契約関係が発生しますが、一方が終了するからといって他方が自動的に終了するわけでもなく、契約管理に注意する必要もあります。
本コラムでは、こうした実務上のトラブルを予防するために、「業務委託」「請負」と「労働者派遣」の違いを整理し、現場での対応の注意点について解説します。
「業務委託契約」や「請負契約」というタイトルが契約書についていたとしても、実際の運用で、
・発注者が毎日仕事の内容を指示している
・発注者の施設内で常駐して勤務している
・業務遂行にあたり、報告・相談・許可が日常的に求められている
といった状態があれば、それは「発注者が労務の提供を直接受けている状態」と評価され、労働契約に該当する可能性があります。
仮に「偽装請負」と判断された場合、以下のような問題が生じ得ます。
・労災事故が発生した際、発注者が安全配慮義務違反を問われる
・残業代請求・社会保険料の未払いを遡って請求される
・派遣法違反・労基法違反として行政指導・是正勧告を受ける
・取引先との信頼関係が損なわれ、契約解除に発展する
そのため、契約形態に応じた「実態」の管理が非常に重要です。
3 「派遣契約」と「請負契約」の違いとは?
労働者派遣は、以下のような特徴を持ちます:
・労働者は派遣元と雇用契約を結ぶ
・業務の指揮命令は派遣先が行う
・派遣元は派遣先との間で「派遣契約」を結ぶ
→派遣期間の上限、抵触日、36協定など多くの規制が存在
これらの契約では、次の点が重要です。
・発注者は、成果物または業務遂行の責任を受託者に「丸ごと」委ねる
・指揮命令は原則として行わない
・作業方法・人員の配置は請負業者が自ら決定する
→成果物ベースでの契約であれば「請負」
→作業ベースなら「業務委託」
「契約書に『業務委託』と書いてあるから安心」→実態が重要です。
「うちの現場は口頭でやりとりしてるからセーフ」→証拠がなくても監督官庁は立ち入ります。
「業務範囲」「成果物」「納品方法」などを明確に記載する
指揮命令を発注者が行わないことを契約書に明記する
・発注者の現場管理者が、外部委託者に直接業務指示を出していないか
・委託者が自社の就業規則・労務管理で人を動かしているか
・勤怠や業務内容の把握を誰がしているか
自社内の管理職向けに、契約形態と運用ルールの研修を実施する
総務部門・法務部門による定期的なモニタリング
派遣労働者が派遣期間の途中で一方的に退職してしまった・・・このようなケースは、業務の継続性や取引先の信頼関係に大きな影響を及ぼす可能性があります。
まず、民法上は「退職の自由」が保障されており、労働者がやむを得ない事情なく一方的に退職したとしても、原則として法的に損害賠償を求めることは困難です。
しかし、実際には以下のような対応策で実務上のリスクを最小限に抑えることができます:
・派遣元と派遣労働者との雇用契約書に「退職時の事前通知期間」を明記する(例:1か月前)
・業務引継ぎや書類整理など、最低限の協力義務を規定する
・派遣先にも「就業条件明示書」による通知義務の共有を徹底する
・退職時の相談窓口や面談制度を設け、円満な退職を促す体制を構築する
また、突然の退職がハラスメントや長時間労働などの職場環境による場合には、派遣元にも一定の配慮義務が及ぶ可能性があるため、派遣先への定期的な職場環境チェックを取り入れることが望ましいです。
派遣労働者が派遣先企業に直接雇用される、いわゆる「引き抜き」についても、派遣元としては頭を悩ませる問題です。
まず大前提として、派遣契約終了後に当該労働者が自由意思で就職すること自体は禁止されていません。しかし、派遣契約期間中や直後に派遣先が意図的に引き抜いた場合、以下のようなリスク・対抗策が考えられます:
・派遣契約書に「直接雇用制限条項」や「紹介手数料に関する合意」を明記しておく
(例:「契約終了後1年以内に当該派遣労働者を雇用した場合、紹介料として年収の20%相当額を支払う」など)
・労働者派遣法第35条の5により、派遣先が派遣労働者に対して違法に直接雇用を申し込んだ場合には、指導・処分の対象となることがある
・派遣労働者との間に「誓約書」や「守秘義務契約(NDA)」を締結し、派遣先への情報漏洩・勧誘活動を制限する方法も有効
なお、実務上は円満な直接雇用移行を希望する派遣先・派遣社員も多いため、「紹介予定派遣」制度を活用する方向での合意形成を検討することが、法的トラブルを避ける賢明な手段となります。
・委託契約の見直し・契約書テンプレートの刷新
・派遣従業員との退職トラブル
・派遣従業員の引き抜きトラブル
・派遣と業務委託の混在現場での是正対応
・偽装請負とされた現場の行政調査対応
・業務委託契約に基づく損害賠償対応
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