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百貨店業界の皆様へ

2026.06.19

百貨店を取り巻く法律問題

1 百貨店特有の法律や規制

 ⑴ 大規模小売店舗立地法(大店立地法)
 個人商店等と比べて規模の大きい百貨店が地域社会と調和を保っていくためには、交通・環境問題等、周辺の生活環境への影響について、適切な環境を図ることが不可欠です。
こうした観点から、大規模小売店舗立地法は、大規模小売店舗につき、概要次の通りの規制を設けています。

 ア 大規模小売店舗(店舗面積1000㎡超)を新設・変更するものは、都道府県(政令指定都市を含む。以下同じ。)に届出を行わなければならない。
 イ 経済産業大臣は、交通、騒音、廃棄物等、出店者が配慮すべき事項を指針として定める。
 ウ 出店者は、指針に沿って、駐車場の確保、騒音の抑制、廃棄物の保管等の対応を図らなければならない。
 エ 都道府県は、地元市町村や住民等の意見を踏まえ、出店者に意見を述べることができ、これに従わない場合には韓国等を行うことができる。

 ⑵ 建築基準法・消防法
 百貨店の店舗は大規模であり、テナント数や各従業員数、来客数も膨大であるため、店舗建物についても厳しい法規制に服します。

 ア 建築基準法
 店舗建物は、建築基準法上の「特殊建物」に分類され、廊下の幅、直通階段の設置、排煙設備、非常用照明、敷地内の通路、耐火建物とすること等、種々の制限を受けます。
 イ 消防法
 絶えず不特定多数者が出入りする上、可燃物も多数陳列・保管されているため、避難通路の確保、消防設備の設置、火気の使用制限など、防災のための厳しい義務が定められています。

 ⑶ 労働法関連(労働基準法、労災保険法など)
 従業員の就業に関して労働法やハラスメント防止に関する法規を遵守すべきことは当然ですが、百貨店においては、各テナントが独自に雇用する従業員も多数存在するため、関係性が複雑になりがちです。百貨店の運営者や、出店しようとする外部業者としては、こうした関係性を理解し、必要な措置を講ずることが重要となります。

 ⑷ 消費者との関係に関する法律

 ア 消費者契約法
 次のような方法によって商品を購入させた場合には、消費者契約法に基づき、売買契約が取消しの対象となる可能性があります。
 ・重要事項について事実と異なる事項を告げた(不実の告知)。
 ・将来において変動が不確実な事項について確実であると告げた(断定的判断の提供)。
 ・重要事項について不利益となる事実を故意又は重過失に寄って告げなかった(不利益事実の不告知)。
 また、店舗内での販売の場合、いわゆるクーリングオフ制度の適用はありませんが、外商が顧客の自宅を訪問して商品を販売した場合、一定の条件の下に、クーリングオフが適用される可能性があります。
 イ 景品表示法
   陳列、あるいは販売員のセールストーク等において、不適切な表示を行うことは、景品表示法によって禁じられています。
 ・品質や規格等について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示(優良誤認表示)
 ・価格等の取引条件について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(有利誤認表示)
 ・その他一般消費者に誤認されるおそれがあるものとして総理大臣に指定された表示

 また、商品販売のために、ある種のキャンペーンを実施することもあるでしょう。こうした場合、顧客を誘引する手段として、取引に付随して提供される経済上の利益を景品類と呼びます。景品表示法は、こうした場合を一般懸賞と共同懸賞に分類した上で、それぞれ上限を設けるなどして、過度の経済的利益を提供することを禁じています。
 ウ カスタマーハラスメント防止法
 顧客から従業委員が受けるハラスメント、いわゆるカスタマーハラスメントについても、重大な問題になり得えます。こうしたことから、近時、カスタマーハラスメント防止法が成立し、2026年10月までに施工される予定です。事業者としては、同法に定めるカスタマーハラスメントの定義を正確に理解し、事業者に義務付けられる各種の措置を講ずることが必要となります。

 ⑸ 高額商品販売を通じたマネーロンダリング対策
 高額商品が販売される百貨店では、マネーロンダリングについての対策を講ずることも重要なテーマとなります。一定額以上の貴金属を現金で購入する場合等は、本人確認が求められますので、社内において業務フローを定め、確認しておく等の措置が必要です。

2 テナント契約と法律上の注意点

 ⑴ 賃貸借契約の基本
百貨店の運営会社等がテナントに店舗を賃貸している場合、こうした契約の形態や各条項の内容についても気を配る必要があります。特に、退去時においては、一般的に、原状回復や契約更新の関係で紛争が生じるリスクが高まりますので、注意が必要です。

 ⑵ 独占禁止法の観点
百貨店の運営会社は、各テナントと比べて大きな影響力を有していることが多いと思われます。こうした影響力を背景に、テナントの営業活動に関して過度な要求をすることは、優越的地位の濫用として独占禁止法に違反する可能性があります。百貨店としては、自社のテナントに対する影響力を考慮した上で、適切な協議・交渉を行う必要があります。   

3 百貨店とオンライン販売の法的交差点

 ⑴ ECサイト運営に関する法律
ECサイト上で商品を販売する形態は、特定商取引法上の「通信販売」に該当するため、同法の規定を遵守する必要があります。具体的には、販売価格、代金の支払い時期・方法、商品の引渡時期、キャンセルに関する事項等を、分かりやすくサイト内に明記すること等が求められます。

 ⑵ オムニチャネルと個人情報保護
ECサイトで注文した商品を店舗で受け取ったり、店舗で品切れとなっている商品をECサイト経由で発送してもらう等、近時、企業が持つ複数の顧客接点(実店舗、オンラインストア、アプリ、SNSなど)を統合し、顧客がどのチャネルを利用しても一貫した購買体験を提供できるようにする戦略(オムニチャネル)が話題となっています。こうした戦略を採る場合、店舗部門とEC部門とで顧客情報を共有することになるため、個人情報保護の要請は、より一層高まると考えられます。

4 トラブルに起因する法的リスク

   このように、百貨店は、その規模やステークホルダーの多様性ゆえに、その運営に際して種々の法的規制に服します。これらに違反した場合、各種法規に基づき、民事上(損害賠償請求、契約の取消し)、刑事上(罰則)、行政上(行政指導、行政処分等)の責任を問われることになります。こうした事態は、企業にとって経済的損失を生じさせるにとどまらず、風評被害や不買運動に繋がるリスクも孕んでいます。このようなことを避けるために、法務部門の設置及び強化は不可欠であるといえます。

5 セミナーのご案内

   当事務所においては、百貨店との長年に亘る取引実績があり、各種セミナー等も承っておりますので、ご希望の場合には、当事務所まで御連絡ください。

セミナーのご案内:「百貨店業界の皆様へ~セミナーのご案内~」 

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