


2026.06.19
⑴ 契約形態とリスク配分
システム開発契約における契約形態としては主に「請負契約」または「準委任契約」に分類されます。
「請負契約」は成果物に対して完成責任(契約不適合に対する追完義務を含む)を負い、検収が必要となるなど、主に受託者(ベンダ)がリスクを負う内容となります。ただし、成果物を完成するまでの工程については受託者に裁量が委ねられることが多いことから、効率的な開発を実現すれば利益を多く得られるという側面もあります。
一方、「準委任契約」の場合は、成果物に対する完成義務を直接負うわけではなく、善管注意義務に基づいた役務提供をすることを前提とした契約となります。成果物に対する検収はなく、作業報告書の確認等を行う形となり、比較的受託者(ベンダ)のリスクは低い契約形態と言えるでしょう。
実務上は、上流工程(要件定義など)は凖委任契約、下流工程(開発)は請負契約として、工程毎に契約を細分化するのが望ましいとされております。
⑴ 開発が遅延した場合、責任の所在やペナルティを巡って紛争が多く発生します。こうした紛争に備え、契約では、以下のような条項を明確に定めておくことが肝要です。
◆納期遅延時の違約金条項
◆不可抗力事由(仕様変更・要件追加等)による納期延長の手続
◆中途解約時の報酬精算方法(進捗に応じた報酬の定め方など)
また、開発に遅延が生じた原因が委託者側にあるのか、はたまた受託者(ベンダ)側にあるのかが争われるケースも多くあります。そのため、仕様変更等のスケジュールに影響を及ぼす事象が発生した場合には、スケジュールのアップデートや、想定されるリスクの提示等をしておくことが必要です。
⑵ 運用・保守契約と契約不適合責任との区別
開発完了後も、障害対応・機能追加・法改正への対応などが必要となります。
この場合、契約不適合責任としての対応なのか、それとも保守契約としての対応なのかが不明確になる場合が多いことから、あらかじめ対応範囲(例:不具合修正/機能追加の区分)を明示しておくことが紛争予防の鍵となります。
⑴ 下請法
システム開発の発注者(親事業者)が開発ベンダーや個人事業主 などの下請業者に業務委託する場合、当該関係が下請法(なお、下請法は2026年1月1日付で「中小受託取引適正化法」として法改正がされる予定です)の規制対象となることがあります。
この場合、システム開発は「情報成果物作成委託」に該当するため、発注元は以下のような義務を負います。
◆発注内容・納期・報酬額等を記載した書面(注文書)を交付すること
◆検収遅延・代金減額・返品・買いたたき等の不当行為を 行わないこと
◆代金を60日以内に支払うこと
⑵ 著作権法
システム開発においては、成果物の著作権の帰属が問題となる場合が多くあります。特に、新規に作成したソースコードやマニュアル等について、受託者(ベンダ)が別案件への横展開を想定している場合は、受託者(ベンダ)に著作権を帰属させるか、別案件への流用することについて委託者にあらかじめ承諾を得ておく必要があります。
⑶ 労働法・偽装請負の問題
システム開発現場では、常駐型委託契約が多く見られますが、実態として発注者が指揮命令を行っている場合には、「請負」や「準委任」ではなく労働者派遣に該当するおそれがあります。
このような場合、派遣法違反(いわゆる「偽装請負」)として行政指導や罰則の対象となることもあるため、契約類型・業務実態・指揮命令系統の整合性を確保することが不可欠です。
⑷ 個人情報保護法
開発委託先が顧客データ等を取り扱う場合、個人情報保護 法上の「委託」に該当します。
発注者は、委託先に対し適切な監督義務を負い、以下のような措置が求められます。
◆業務委託契約書における取扱目的・安全管理措置・再委託制限等の明示
◆委託先への定期的な監査や報告義務の設定
◆インシデント発生時の報告・再発防止体制の構築
⑸ 情報セキュリティ・サイバー攻撃対応
開発段階でセキュリティ要件を満たさない場合、脆弱性を原因とする情報漏えいが発生しうるため、ISO27001(ISMS)やNISCガイドライン等を参照し、設計段階から安全管理措置を講じる必要があります。
また、委託者は契約上、セキュリティ事故発生時の責任分担や報告義務を明確にしておくことが望まれます。
システム開発における典型的な紛争類型として、
◆仕様認識の齟齬(要件定義の不明確さ)
◆検収の遅延・拒否
◆保守範囲を巡る対立
◆著作権・ソースコード開示をめぐる争い
などが挙げられます。
こうした紛争は、裁判・調停・ADR(情報処理推進機構:IT紛争仲裁センター)などで解決が図られますが、その際には契約書・議事録・メール(Slack等の履歴を含む)の保存が決定的証拠となるため、文書管理体制の整備が不可欠です。
当事務所においては、システム開発紛争についても取扱実績があり、各種セミナー等も承っておりますので、ご希望の場合には、当事務所まで御連絡ください。
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